御盆を終えて

今年は当初冷夏という天気予報に作物の心配をしていたのが嘘のような猛暑となりました。これも温暖化のせいなのでしょうか。いろんな所で集中豪雨による被害が伝えられる一方で、長岡は雨が少ない夏でした。庭の木々が枯れそうになるぐらいの暑さと少雨も温暖化の異常気象なのでしょうか。健康な私もこの暑さで少し夏ばて気味ですから、お年寄りや、ご病気をお持ちの方には辛い夏ではなかったかと思います。残暑も厳しいのでしばらくは体調に気をつけましょう。
最近高齢者の所在が不明な事柄が全国各地で多く報道されました。一部は年金の不正受給だったり、最後のお葬式を出したくないとかいろいろな事情があるのでしょうが、少し前なら考えもつかないような事件です。行政の不手際も有るのでしょうが、根本は私たちのこころ、考え方に問題があるのでしょう。感謝の気持ちが薄れてきたという一面があります。それと根本的な問題ですが、幸せの価値観がずれているのではないでしょうか。自分たちの肉親、ましてや自分を生んで、育ててくれた親の最後をきちんとしてあげられないという事件が方々で起こるというのは何か大きな問題を私たちの社会が抱えているのでしょう。人は得てして自分はあたかも自分の力だけでこの世に生まれてきて、今ある状態、仕事や生活のすべてを自分自身の力で手に入れたと思いがちです。ですが人は目に見えないいろんな人たちにいろんな恩恵を受けています。天道様という言葉を最近耳にしなくなっています。お日様も太陽のことですが、このお天道様のお蔭で私たちは生きていられるのです。科学や物理的にはひとつの天体ですが、知らず知らずに恩恵を戴いています。また生きてゆくうえで、多くの先輩や友人そして一番身近な家族に支えられて生きているのです。一部の人たちの様に、太陽をあがめて礼拝しなければということ言っているのではありません、感謝の気持ちを心において、自分の一番身近な家族や親に周りにの人たちには接したいものです。
私もこの世に生まれて生を戴いていますから、皆様と同じように両親が居ります。その両親にも親がいます。それをさかのぼって数えていきますと十代目には1024人の親から自分になります。累計すると十代で2046人、二十代では104万8576人累計すると187万4292人になります。三十代までさかのぼるとその数は10億7374万1824人になります。こんな大勢のご先祖様が存在して自分も知らない大勢のご先祖様の恩恵、仏教ではご縁を戴いて今の私が存在するのです。そしてそのひとつどこが欠けても今の私は存在しません。ですからそんなご縁に感謝して親やそこに到るご先祖様に接したいものです。日本は感謝の文化と思います。普段皆様も使う「ありがとう」という言葉には、いろんな説がありますが、そのひとつに「人の難きこと、死ぬるいのちのありがたし。」のありがたしが「ありがとう」となったといいます。人と生まれることはとても難しい、ましてや死ぬことのできるいのちを戴いたことはとても有り難い事だという意味です。英語のthank youとは少し違いますね。自分の身近なものが亡くなるとそれを悼む動物はたくさんいますが、ご供養をしてそれを悼むのは人間だけだと言われます。親や家族が無くなって、いなくなってそのままにして置くのは、言い換えれば人で無くなったと言うことです。
今年のお盆も多くの檀信徒の皆様やご親戚の方がご先祖様にお参りなられました。でもテレビではお盆休みに海外に旅行している混雑が報じられています。お盆は昔から一年に一度ご先祖を迎える日です。だからお盆休みが有るのではないでしょうか。この日ぐらいは自分に戴いたご縁に感謝してご先祖様にお参りしていただきたいものです。そんな何気ないこと、ちょっとしたズレから最後には親がいなくなってもそのままにして置いたり、亡くなったことを知っていてもそのままにして置く様な事件になると思います。戴いた御縁に感謝の気持ちを忘れずに日々の暮らしを送っていこうと思います。
山主 合掌